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これから何回かにわたって服装ができ上がるまで(服装の構成)について述べてみたいと思います。

服装の構成は、被服を作ること(被服の形成)からはじまり、次にそれを人が着ること(人体の着装)になります。いったん着た被服を脱ぐこと(脱衣)も服装の構成に含まれます。そして被服を着装している様子(装態)もいろいろに分類することができます。

被服を作ること、すなわち被服の形成には被服を着装する人体の形態的な特徴を理解しておく必要があります。とに角、人体は複雑です。そこで体形にあった被服を作るため人体の特徴的なことを整理してみましょう。

足で直立して歩く人体には上下・前後・左右の方向性があり、特に動いているときの様子、つまり動態のとき特異な様子を示します。このことは作る被服に大きく影響します。人体には方向性があることを認識しておくことが大切です。

上下性についてです。直立している人体には上の方向には大きな広がりがあります。冠・烏帽子・シルクハットや誇張された婦人の髪飾りなどが服装における頭部服飾の拡大の例となります。はしごを使って頭部を飾った例などが知られています(1770年頃の例)。一方、下方向は床などの制限があって体形は誇張しにくいのですが、16世紀に流行した婦人の高靴や現在では底の高い靴などの例がある程度です。

前後性も人体の形態の特徴と捉えることができます。人体は顔・胸・腹などが対人前面とし、前方へ歩くことが行動の基調となっている体形です。被服は人体の前面でいろいろな模様や形、また装飾が行なわれています。一方、後方における展開はあまり顕著ではありません。しかし下肢の被服には前進行動の後ひきの効果がありますので、長袴や平安時代の束帯の裾や19世紀のバッスルなどが後面服飾の例となります。前面の装飾は平面的ですが、後面は立体的な装飾が可能です。

左右性と服装との関連を考えてみましょう。人体の胴体は扁平ですが、手(上肢)は左右への伸長、下肢(足)は開脚によって、人体の左右への広がりが服飾などに利用できます。肩の張(たとえば、かみしも(裃)のような肩衣)、そでの拡大や下肢衣服の増大化などが例となります。衣服は左右対称が一般的ですが、右利きや左利きなどの一方性によって左右不対称の型式をとることがあります。刀を左腰に帯びる装着や左胸のポケットなども左右性の例となります。身の回りの例を調べてみましょう。

格好の良い服装のため衣服を作る基本として、人体の美的な分割として黄金分割の原理の適用が考えられます。黄金分割というのは、ある物を一定の寸法に2分割するとき小さい部分と大きい部分の比率が1:1.618(3:5、5:8、8:13)のようにした分割法です。古代ギリシャ以来の建築や彫刻などに適用されている最も調和のある美的分割法です。

服装美を形どる分割法として、頭部を単位として全身の長さを等分することが行なわれ、7頭身、8頭身、10頭身などの分割が行なわれてきました。上部を3とし下部を5に分割したときが黄金分割の8頭身となります。理想的なプロポーションです。

人体の体形は、服装に大きく関係します。体形はいろいろと変化しますが、変化には人の成長による変化、姿態による変化と運動による変化などがあります。姿態による変化について言いますと、直立のほか正坐・あぐら・椅子に腰かける・横にふせるなどがあります。このような姿態による身体各部位の変形を被服を作る上で考える必要があります。床の上に坐る生活様式を習慣とする中近東の人達の衣服では、下肢部分がきわめてゆとりがあるように考慮されています。

私達に適した服装のための衣服を作るためには、さまざまなことを考える必要があることを述べてきました。

日本繊維製品・クリーニング協議会 会長 角田光雄