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服装として装いを整えるには、まず被服を用意しなければなりません。理想とする被服を作製するには、複雑な人体の形態を理解する必要がありますので、人体の形態についての基本的な特徴について述べました。
言及はしませんでしたが、人体についての計測、即ち体容計測についての技術も用意しておかねばなりません。

体容の計測は、正常の状態即ち直立不動の姿勢について行なわれることが通常です。その結果、正常の状態に適合した被服が製作されます。
しかし実際の生活では、人はいろいろ動き回っています。そのため被服は人体の動きつまり動作を妨げて自由に動きができなくなるようでは困ります。
つまり被服は人体が動いたときの状態である動態に適合することが必要となります。動態における人体各部位の運動の範囲や変化の程度などを被服製作のときの設計に加味することが必要となります。
しかし、何回も言うようですが、人体は複雑ですからこのことは大変に難しいので、応用解剖学や人体形態学の知識などを応用する必要があるかもしれません。
また最近は人間工学の視点から、人間の体形・構造・動作・生理・心理などと人間の用いる機械・道具・物などとの合理的な関連づけの研究が進んでいます。
体形の変化を計測して、これに対応する被服の設計をどのようにしたらいいかの研究も進んできています。三次元計測器などもいろいろ開発されています。
しかし実際的な方法が用いられています。人体各部の屈曲に対して、その表面皮膚の伸長割合について、Body Flexと称する数値が示されています。
そして被服材料との伸長性との関係が考察されています。
背面伸長では横方向に13~16%伸びます。ひざ曲げ伸長のときは、長さ方向に35~40%、また周囲は15~23%伸びます。ひざ曲げ伸長では、長さの方向に35~45%で、周囲は12~14%伸びるというようなデータがあります。
一方被服材料では、一般衣料や寝具家具用生地などでは快適なストレッチガーメントとしては伸長範囲として25~30%と規定され、強いストレッチガーメントではファンデーション、スキーウェア、水着、運動服などで30~50%となっています。
そして体表面の動作による伸縮の度合いの観察方法として、体表面に方眼描画を行なって動作前後の長さの変化を調べる方法などが行なわれています。

体容計測について考えましたので、関連として尺度のことについて述べてみましょう。ものの尺度のはじまりは人間の体にあったようです。いわゆる人体尺ということです。英語では長さを測るのに「フット(Foot):足」という単位が今でも使われています。フランスやイタリアでも昔は同様に足を意味する言葉が単位になっていたようです。古代ギリシャやローマでもそうだったといわれています。
足を絶対の長さにすると、それぞれの国によって違ってきます。イギリスでは30.5㎝、フランスでは32.5㎝、古代ギリシャでは31.6㎝、そしてローマでは29.6㎝だったようです。イギリスの方がフランスよりも小さい値ですが、フランス人の足の方がイギリス人の足よりも平均して長いというわけでもないと思いますが。個人差の大きい人の体の部分を長さの基準にして、地域ごとに共通の尺度が作られたことは興味のあることです。
ところで長さを測るのに「足」を用いるというのは、いかにも「立つ文化」であるヨーロッパらしいと思います。しかし世界的には、腕や手を物差しにして計測する例の方がはるかに多かったようです。
インドネシアのある種族では指の幅、そして左右に広げて伸ばした両手足の間の長さを、長さの尺度にしていました。日本では昔、縄や水深などを表すのに「ひろ」という長さが用いられていました。これは左右に広げて伸ばした両手先の間の長さであります。

日本繊維製品・クリーニング協議会 会長 角田光雄