- 品名
- 紳士ジャケット
- 状態
- クリーニング後に、広範囲に波打ちが生じた。
- 素材
- 表地:毛95%
ポリウレタン5%
裏地:キュプラ - 取扱い絵表示
- 処理方法
- パークロロエチレンドライクリーニング(タンブラー乾燥60℃・30分)
事故内容
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製品特徴と原因
- ポリウレタンは伸縮性に優れた繊維。
- ポリウレタンは、時間経過とともに脆化(劣化)し、伸縮性が低下する。
- 生地に織り込んである(混紡糸として使用している)ポリウレタンの脆化(劣化)状態は、保管や着用過程では判りにくいことが多い。
- ドライクリーニング時、正常なポリウレタンは、溶剤によって膨潤するものの乾燥と共に元の形状に戻るが、脆化(劣化)したポリウレタンは戻りにくい。よって、劣化したポリウレタンを混用した生地は、伸びて波打ちやすい。(縫製品の場合、縫い目部が収縮したような外観になる。)
- ポリウレタンの脆化(劣化)は、湿度や汚れ(特に皮脂汚れ)付着によって促進されるため、脆化(劣化)抑制には、高湿度下に保管しないことと、汚れを除去することが効果的。
- 本事例は、クリーニングの受付時にポリウレタンが脆化(劣化)していたため、生地が伸び、波打ったと考えられる。
防止方法
アパレル
- 製造年を表示する。
- ポリウレタンは、高湿度環境に保管すると脆化(劣化)しやすいことを消費者に伝える。
- 苦情発生時、消費者に、脆化(劣化)特性上の現象であることを説明する。これを続けることで消費者の理解を深めていく。
消費者
- アテンションタグや縫い付けラベルの注意事項を精読する。
- ポリウレタンは、他の繊維素材よりも脆化(劣化)しやすいことを理解する。
- 汗や皮脂が付着しにくいように、また残留しないようにする。
- 保管時には、高温高湿度環境に置かないようにする。
クリーニング
- ポリウレタンは、他の繊維素材よりも脆化(劣化)しやすいため、時間経過とともに伸縮性が低下して伸び、生地が波打つことがあることを、受付時に消費者に伝える。
- 苦情発生時、消費者に、脆化(劣化)特性上の現象であることを説明する。これを続けることで消費者の理解を深めていく。
日繊ク協の考え方
脆化(劣化)現象はクリーニングによって顕在化しやすいが根本的には素材の特性上の現象である。アパレル業者やクリーニング業者は、ポリウレタンが、他の繊維素材よりも脆化(劣化)しやすいことを消費者に伝えていく必要があり、消費者は、この特性を理解する必要がある。クリーニング事故賠償基準の、背広の商品別平均使用年数は合冬物で4年である。これを過ぎた商品に脆化(劣化)現象が生じるのは、ある程度止むを得ないとも考えられる。