事故内容

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品名

セーター

状態

右肩~左腰にかけての部分が帯状にまわりの色と違ったようになっている。

素材

アクリル56%、綿22%、ポリエステル22%

取扱い表示

    

処理方法

石油系ドライクリーニング、加熱静止乾燥、スチーム仕上

製品特徴と原因

モール糸の構造は、芯糸と押さえ糸からなる撚り合わせた二本の糸にパイルとなる糸を巻きつけ、それがカットされてパイル(花糸)となる。このときにパイルが脱落しないよう、一般的には熱融着繊維を使って花糸を接着する。

熱融着繊維に使用される樹脂量が多いほどパイル(花糸)の脱落防止効果は高くなるが、それに伴いモール糸の風合いが硬くなることから兼ね合いが難しく、パイル(花糸)の脱落を完全に防止することは困難なデリケートな素材である。

当該品の色が違ったように見えている部分は、モール糸のパイル(花糸)が脱落して芯糸が露出した状態となっていることから、着用やクリーニング処理などにおいて物理的作用の影響を受け、パイル(花糸)が脱落したと考えられる。

現象が右肩から左脇下方向へ斜めに生じていることから、シートベルトの装着など局部的に強く擦られる着用状態があったと推察される。その後にドライクリーニング処理が加わりパイル(花糸)が脱落した可能性が考えられる。

防止方法

アパレル

  • 事前にモールの脱落性の試験や洗濯やドライクリーニングの繰返し処理を行い、パイル(花糸)の脱落しやすさを確認する。
  • モール糸製品に対する取扱注意表示を付記し、広く注意喚起することが必要。例えば「モール糸はデリケートな素材で毛羽が抜けやすい構造をしています。ベルトやバッグなどが長時間同じ部分に当たったり、強く擦られたりすると、毛が潰れたり抜けやすくなります。また、ドライクリーニングの際は裏返したり、ネットを使用するなどして下さい」など。

消費者

  • モール糸はデリケートな素材なため、着用時に強く擦られるような着用状態や、例えばベルトやバッグなどが長時間同じ部分に当たるような着用状態は避ける。
  • 洗濯は手洗いによる押し洗いが推奨され、つまみ洗いやもみ洗いは避け、乾燥方法は平干しとする。

クリーニング

  • 受付時に外観変化の有無を確認する。
  • 洗濯やドライクリーニングの際に機械的作用の影響をできる限り受けないように注意する。製品を裏返したり、ネットを使用するなどや、乾燥時も静止乾燥などを行い機械的作用の影響を極力避けるようにする。

日繊ク協の考え方

モール糸はデリケートな素材なため、着用時に強く擦られるような着用状態や、例えばベルトやバッグなどが長時間同じ部分に当たるような着用状態は避ける配慮が必要と考えられる。洗濯やドライクリーニングの際にも物理的作用の影響をできる限り受けないように配慮することが必要と考える。