流行も着装心理の大きな要素です。流行とは何でしょうか。そして着装との関係を考えてみましょう


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自分の納得する服装を整える最初は、被服を身につけることです。これは、前回にお話ししましたような心理が働くからです。今回述べますような心理もあります。まず流行との関係から始めましょう。

流行追随の心理。流行とは何かということから考えてみましょう。流行というのは次のように考えられます。

ある社会現象の中で、一定数の人たちが一定の期間、ある集団の意図のもとに始められた同似の集団行動をとるように心理的に誘われること。

または、

ある社会の中で、ある期間その社会の相当広い範囲の人たちが、模倣を媒体としてとる、流動的だが集中的な社会的同調行動によってかもし出させる社会的現象である。

そして流行は、その追随者に社会的同調行動をとらせる反面、自己を他者から区別しようとする個別化の欲求を満たしながら社会の中で時間的あるいは空間的な集中によって繰り広げられる社会現象です。少々堅苦しい説明です。

服装の流行は、まず原型としてモードが創成あるいは発現し、これが採用されそして追随されるとファッションとして流動します。さらにこれが一時に特定の人たちの間で強められますとファッドとなります。そして、これらが熱狂的な様子で流動するとクレイズ(Craze)となります。一方これがある意識上の支持で広範囲な雰囲気として持続されるとブームになります。

とにかく、まず服装に対して模倣・追随にはじまる同調、あるいは受容の欲求によってこれを採用し、そして権威や効果を身につけますと、優越感・満足感や安心感を得ようとする心理によって流動して流行となります。このようなことは一種の抗しがたいある種の社会的強制力のような性格がありますから流行に関心を持っている人たちを巻き込みます。現代社会では、心理的に動揺している中間層の人たちが流行に巻き込まれやすい傾向が見られます。このことは、より下層に落ちるという不安から、流行という威信を身につけているという意識によって社会的な孤独感から救われることによります。

また流行は、その先端を切るという優越感に浸らせたり、あるいは流行の威光の前に自分を投入させて陶酔状態にさせることもあります。このようなことを加速するのがマスコミです。しかし流行は、特定の人たちから集団全体に普遍化してしまうと、その特色や威信がなくなり流行は一定期間で流動が停止します。

日本繊維製品・クリーニング協議会 会長 角田光雄

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