吸水速乾(吸汗速乾)【2015年7月】

photo credit: Capital Kickoff Classic 2012 via photopin (license)

今の季節、衣類を着用していると、汗で濡れてまとわりついたり、汗を吸いにくい素材であれば蒸れたりし、不快感が増します。これを解決するため、数年前から吸水速乾(または吸汗速乾)を謳う衣料品が徐々に販売され、今では定番的な機能として消費者に認知されていると思います。

吸水速乾の機能は、吸水性と速乾性に分かれます。

  1. 吸水性
    生地が水(汗)を如何に早く吸収するかという機能です。評価方法は、JIS(日本工業規格)で規定されており、生地の上から水を1滴落とし、完全に生地に吸収されるまでの時間を計測します。一般的に10秒以内であれば、吸水性があると言われています。
  2. 速乾性
    水(汗)を吸った生地が如何に早く乾くかという機能です。評価方法は、ISO(国際標準化機構)で規定されており、一定量の水を吸水させ、乾燥時間を求めます。ISO規格での目安値は、A1法で組織や素材により異なりますが、70~85分となっています。

このような吸水速乾の機能は、次の様な仕組みや加工によって付与されます。

  1. 異形断面の糸の使用
    繊維の断面がY字、十字になった糸を使用することにより、毛細管現象を引き起こしやすく吸水性に優れ、また吸収した水分を同様に拡散しやすくなることで水の表面積が増え(空気にさらされる面積が大きくなる)乾きやすくなります。
  2. 生地の織編構造の工夫
    生地を二重構造にし、肌側を吸水しやすい綿等のセルロース系繊維を使用し、外側に合成繊維を使用することで、吸収した水分を毛細管現象で外側に移行し、表面積を増やして乾きやすくなります。
  3. 加工剤によるもの
    親水性のある加工剤を生地に塗布することで、吸水性に優れ、また吸収した水が生地表面で広がり乾燥性を向上させます。

吸水速乾の機能として、異形断面糸を使用したり、生地構造を工夫するものは、生地企画の段階で導入する必要があり、その効果はほぼ恒久的に継続します。反対に、通常の生地にその効果を付与するには、加工剤にて処理することしかできません(後加工)。また、繰り返し洗濯等によりその効果は徐々に落ちていきます。

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