インクジェットプリント【2019年11月】
繊維製品に用いられるインクジェットプリントについて説明します。
今までの捺染(プリント)はシルクスクリーンを用い、プリント台に生地をセットし色糊を置く方法が主流でした。この方法では色の数に合わせシルクスクリーンの枚数が必要なため、デザイン作成から仕上がりまで2か月以上の日数を要します。そのためプリント代も高価で、ある程度の数量が必要でした。またプリントを行う人の熟練度も必要です。
インクジェットではシルクスクリーンが不要で、デザインの自由度が大きく、グラデーションが得意です。
インクジェットプリントを工業的に導入し始めたのは着物業界でした。版下不要、工程短縮化、色数に制限なしなどから振袖に使われたのです。その後、婦人服、雑貨品などにも使われるようになりました。
振袖には型染めの場合、型紙の枚数150組が普及品、高級品ともなると300組などがざらにあり、多額の型紙投資が必要であり、インクジェットプリンターが導入されたとの背景があったようです。
実際に生地にインクジェットでプリントする場合は、シルクスクリーン用の色糊と異なり流動性が高いので、布の方に滲み防止の前処理が必要です。
初期のころのインクジェットプリントはプリント速度が遅かったですが、現在は機械の改善が進み大量生産品にも使用されています。生産能力としては1時間当たり1000mプリントできるような機械まで開発されています。最速のもので3000mプリントできるものもあります。
セーレン(株)では700台のインクジェットプリントの機械が稼働し、プリントのほとんどがインクジェットで行われているといわれています。工業製品として電車やバスの座席シートは正に有効なプリント方法と考えられています。また、個人用オーダーメード製品製造にも利用されています。
なお、個人用のインクジェットプリント機もあり、自分で作成した柄、撮影した写真をプリントすることが可能となり、自分オリジナルのTシャツ、トートバッグその他の製品を作ることができます。
今までのプリントと同様に繊維の種類と染料の選定が重要です。
一例を下に示します。
インクジェットプリントの染色工程は今までの方法とほぼ同じです。
従来の捺染とインクジェットプリントの違いは次のようにまとめられています。