麻【2020年6月】
夏が近づくと麻素材が店頭に並ぶようになります。
麻は夏を快適に過ごすための衣服材料として昔から親しまれてきました。さらっとした着心地の麻の衣服は蒸し暑い日本の夏にはぴったりの素材です。今回はそんな『麻』についての話です。
「麻」と一般的に呼ばれていますが、麻は長くて強い繊維が採れる植物の総称で、その種類は約20種類あります。その中で衣料品によく使用されるのは、亜麻(アマ)=リネン、苧麻(チョマ)=ラミーの2つです。
亜麻は温帯から亜寒帯の地域で採れる一年生の植物で、採取した繊維をフラックス、糸と生地をリネンと言います。苧麻は温帯から熱帯で採れる多年生の植物で生育が早く年に3~4回収穫することができます。
上記2種類の他にも、大麻(タイマ)=ヘンプ:衣料や寝装に使用、黃麻(コウマ)=ジュート:農産物を収納する袋、カーペット基布に使用、サイザル麻:コーヒー豆の袋に使用、マニラ麻:昔は船舶のロープに使用、のようにそれぞれの特性によりいろいろな用途で使われています。
品種により植物から繊維を取り出す部分が違い、リネン、ラミー、ヘンプは茎や幹から採る靭皮繊維(ジンピセンイ)、サイザル麻やマニラ麻は葉から採る葉脈繊維(ヨウミャクセンイ)です。
亜麻や苧麻の繊維の特徴ですが、中央には空洞がありそこに水分を含み発散するという吸水・発散性の効果があります。また引っ張り強さが大きく伸びにくく硬い繊維で張りやコシ、シャリ感があり濡れたときの強度が大きいですが、その一方でしわになりやすく繊維がフィブリル化(分繊化)しやすいため着用時の摩擦により白化が生じやすい性質もあります。
また、生地によっては繊維の太さが不揃いであったり、糸節、原料素材そのままの硬い部分などが混入していたりする場合もありますが、天然素材ならではの特徴でもあります。
麻の特徴を上手に活用して暑い夏を乗り切りましょう。