抗菌加工と抗ウイルス加工【2021年2月】
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の拡大に伴い、衛生関連商品が市場に出回っています。消費者の立場からすると、抗菌加工や抗ウイルス加工などの機能を標榜していても、品質や安全性は大丈夫なのか心配なところです。今回は抗菌加工や抗ウイルス加工とはどういうものなのか、どのように品質や安全性を保証しているのかを解説します。
細菌(バクテリア)とウイルスの違いを知っていますか?
細菌は栄養分、温度、水分があれば自己増殖することが出来る生物ですが、ウイルスは自己増殖することが出来ず他の生物の細胞に入り込み、その細胞の力を借りて増殖するため(これを感染といいます)、分類上生物ではないとも言われています。細菌の大きさは1μm程度ですが、ウイルスの大きさは0.01~0.1μm程度で非常に小さいことが分かります。
抗菌加工や抗ウイルス加工は、衣料などの繊維製品を初め、プラスチックなどの樹脂製品、金属製品などに用いられています。抗菌加工は、製品の表面に付着した菌の増殖を抑制することが出来る加工で、菌を死滅させることを目的とした加工ではありません。抗ウイルス加工は、製品の表面に付着したウイルスを減少させることが出来る加工で、病気の予防などの目的ではありません。
抗菌加工の評価方法として、繊維製品ではJIS L 1902に、非繊維製品ではJIS Z 2801に規定されていいます。どちらの方法も、試験体に対して一定量の菌液を植えつけ、一定時間後に菌がどの程度増減しているのかを数えます。抗菌未加工の試験体も同様に試験し、未加工品と加工品との比較でその効果を評価します。例えば、1万個の菌を植えつけた後、18時間後では未加工品は1,000万個に増えますが、加工品は18時間後でも1万個のままの場合、抗菌加工の効果はあると言うことになります(一般的に18時間後の未加工品の菌数より、加工品の菌数が1/100以下になれば効果があります)。菌種としては、黄色ぶどう球菌、大腸菌などを用います。
抗ウイルス加工の評価方法として、繊維製品ではJIS L 1922に、非繊維製品ではISO 21702に規定されていいます。どちらの方法も、試験体に対して一定量のウイルス液を植えつけ、一定時間後にウイルスがどの程度減少しているのかを数えます。抗菌性試験と同様に、植え付けたウイルスより一定時間後の加工品のウイルスが1/100以下になれば効果があることになります。ウイルス種として、A型インフルエンザウイルスやネコカリシウイルスを用います。
これらの抗菌性や抗ウイルス性試験で効果のあるものは、抗菌加工、抗ウイルス加工製品として標榜されています。またSEKマークやSIAAマークが表示された製品では、加工剤成分の安全性や、皮膚に対する安全性評価も行っています。