衣料用「粉末洗剤」と「液体洗剤」について
~①洗剤の歴史~
今回は衣料用洗剤の歴史について説明します。
洗濯は昔から行われてきました。それは、着用した衣服が汚れた場合、そのまま着続けていると問題があると考えられていたからです。
はじめは水だけで汚れを落としていましたが、汚れた水の中でそのまま洗うのでは、一度落ちた汚れが再度付着してしまうため流れている「水」、すなわち川へ行って洗濯するようになりました。洗い流すという理にかなった考え方です。童話の世界でも桃太郎のおばあさんは「川へ洗濯に行っています。」
江戸時代には植物の実や葉を煮た汁を使用した事例が記述されています。サポニンには水と油を混ぜたり、泡を立てて汚れを落としたりする石鹸と同じような働きがありますが、石鹸(陰イオン性、弱アルカリ性)とは違い非イオン性でかつ中性です。
サポニンを含む植物には、ムクロジン、サイカチの果実などがあります。
➀ムクロジは西日本から、台湾、中国南部、ヒマラヤ、インド北部まで自生し、昔は庭に植えたりしました。その実は羽根つきの玉にも使われており、果皮はサポニンを含み、水に混ぜて振ると泡立ちます。
⓶サイカチはマメ科の落葉高木で山野に自生し、栽植もされますが果実の莢にはサポニンが含まれ、石鹸の代用とされました。
お米やダイコン、大豆などを煮ると、細かい泡が立って、よく吹きこぼれることがありますが、それはサポニンが溶け出しているからで、油で汚れた食器類をゆで汁に浸けておくと、洗剤を使わなくても汚れがよく落ちます。また、界面活性作用は石鹸に比べるとかなり弱いですが、世界には今日でもサポニンを多く含む植物を石鹸代わり利用する民族が多く存在します。
日本では、一般庶民が石鹸を使うようになったのは明治以降です。国産の石鹸が初めて売り出されたのは1873年(明治6年)、合成洗剤は1951年(昭和26年)に家庭用粉末衣料用合成洗剤、1956年(昭和31年)に台所用中性洗剤が発売され、一般家庭で洗剤が使用されるようになった歴史は、意外と短いです。
当たり前の話ですが、洗濯は「衣服」「汚れ」「水」「洗剤」「機械力」「温度」が必須条件です。各種条件によって洗浄力が異なります。
水については硬水と軟水、機械力については洗濯機の構造、温度については低温と高温によって汚れ落ちが大きく分かれます。
機械力に関して言えば、衣服を石にたたきつける方法、浮世絵に出てくる砧(きぬた)、岡山県奥津温泉の足踏みによる方法、現在流行りの超音波やマイクロバイブルを用いる方法など歴史的にもいろいろな方法が知られています。