帯電防止加工(制電加工)【2013年11月】

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photo credit: Elijah via photopin cc

冬の季節、ドアノブを触った時に「パチッ」と音や光と共に指先が痛くなった経験は誰にでもあると思います。これは人体が静電気を帯びているからです。静電気を帯びた状態を帯電と言います。

静電気は一般的に、物体と物体を摩擦したり、はく離したりする事で発生します。帯電していない物体と物体が接触することで、電気(電荷)の移動が起こり、その状態ではく離すると電荷の偏りが生じ、一方の物質はプラスの電荷を持った状態、もう一方はマイナスの電荷を持った状態となり帯電が発生します。例えば、前述のドアノブのケースでは、歩行することで靴と床で摩擦やはく離を起こしたり、椅子に座った状態から立ち上がることで衣服と椅子張りの生地で摩擦やはく離を起こしたりして、人体が帯電します。帯電した人体が金属のドアノブに触れようとした瞬間、静電気が一気に人体を介して放電します。この放電が「パチッ」というものの正体です。

では、静電気を防ぐにはどうしたら良いでしょうか?

1.湿度を高くする。

空気中の水分が高くなると静電気が逃げやすく(放電しやすく)なるため、湿度が高い梅雨時や真夏など帯電し難くなります。

2.帯電防止剤を生地に塗布する。

帯電防止剤は、水分を吸着し導電性(電気の通しやすさ)を付与する界面活性剤タイプのものが主流です。生地表面の導電性が高くなると静電気が逃げやすくなります。衣類にスプレーして静電気を防ぐものは、帯電防止剤が使用されています。

3.導電性繊維を生地に使用する。

導電性繊維とは、ナイロンやポリエステル糸の芯部分にカーボン(カーボン=炭素は電気を通しやすい性質を持っています)を入れた繊維のことです。通常導電性繊維は、1インチ(2.54cm)や1/2インチ(1.27cm)間隔で生地に挿入されています。生地が帯電した場合、導電性繊維は雷が避雷針に引き寄せられるのと同じ様に、静電気が導電性繊維に引き寄せられます。導電性繊維に集まった静電気はコロナ放電という微弱な放電を始めるため、帯電が起こりにくくなります。帯電防止剤は、洗濯等により徐々に効果は薄れていきますが、導電性繊維は破断しなければ半永久的にその効果を発揮します。そのため、静電気による事故が発生しやすい電子部品を扱う工場や、危険物を扱う化学工場・ガソリンスタンドでの作業服は、耐久性のある導電性繊維の入った生地が使用されています。

余談ですが、自動車から降りてドアを閉める時、ドアに触れた瞬間パチッと来ることがありますが、これを防ぐには降りる前に自動車の金属部分に触れながら降りてみてください。降りる瞬間衣服とシート地のはく離により帯電する訳ですから、その時に金属に触れると静電気は自動車に流れていくため、パチッとなりません。自動車は大きなアースと同じです。

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